宅間守 「精神鑑定書」を読むを読んで考えたこと
- 犯罪を防ぐことはできるか
犯罪を簡単に防ぐことはできない。これまで前科があって、再犯しそうな人であれば、何らかの対処法があるのかもしれないが、これまで犯罪歴がなく、問題行動を取ることと無縁の人であれば、対処のしようもない。そのため、事前に対策を講じることができないので、どうしても事件が起きてしまうことは致し方ない。そう考えていくと、犯罪というのはどうしても生じてしまうものであり、それが起こるのが当然なものとして生活していくしかない。
では、問題行動を頻繁に起こしていたケースはどうだろうか。彼らを要注意人物として定め、彼らの行動を監視することで、犯罪を抑制することはできるのかもしれない。しかし、四六時中彼らの行動を監視することは現実的にいって不可能であるから、これまた防ぎようがない。だから、最終的な手段として、刑務所に収容しておくか、精神病院に収容しておくかのいずれかの選択を取って対処しているのが現状である。
法律を厳罰化するとの考えもあるが、それはあまり効果的な策ではないと考えている。どれだけ法律を厳罰化しても犯罪を犯す人は一定数いるわけで、そうした人たちは不利益になると分かっていても平気で犯罪を犯すので、法律を厳罰化することは根本的な問題の解決にはならないといえる
- 犯罪を起こす人たちの居場所をどうするか
これについて具体的な考えを明示することはとても難しい。何か問題があったら、精神病院なり警察なりに相談して精神病院へ閉じ込めておくと考える人もいるが、精神病院への入院は本人の同意が必要なケースも多い。特にそれほど激しい問題行動でない場合、そうした施設に収容しておくことはとても難しい。犯罪を犯して懲役を受け、一定年数刑務所に収容されることになっても、懲役年数に達すれば社会に復帰することになる。余程、重大かつ悪質な犯罪でない限り、いつまでも被告人を刑務所に閉じ込めておくことはできないのだ。
犯罪をどうすれば防げるのかを考えていくと、それを防ぐことは難しいと言わざるをえない。一定の人たちが犯罪を犯すことは仕方のないことだと頭の中に入れておいて、社会を回していくのが、今考えられる社会のあり方である。