怠惰な生活を送る青年の日記

社会の片隅でひっそり生活しています。

無という名の純粋な生活

 新今宮駅の改札を抜け出ると、小便と生ゴミと汗臭さとが入り混じった何ともいえない不快な匂いが鼻孔を指す。そうした不快な匂いが街全体を覆い、よそ者を惹きつけない空気感がそこかしこに漂っている。少し歩けばここが他とは違うエリアであることはすぐにわかる。ここにはキタのような華やかさやミナミのような賑やかさは少しもなく、ひとことでいうならば「無」と名付けるのが相応しい。


真っ昼間から路上に体を丸め込みながら白い吐息をこぼすオジサンやそこらへんのゴミ箱をひたすら漁りまわって食い物を手にする歯の抜けたオバチャン、ただ路上の影を見つめ続けるだけのギャンブラーなど本当に色んな人がいる。


ここには何もない。社会特有の競争心や嫉妬心、名誉欲、支配欲、優越感などはどこにも存在しない。ただただ無の塊が辺り一面に広がっているだけである。それでも人間の営みが至るところに存在し、穏やかな時間がゆったりと流れている。

 

ここへ来るたびに自分にピッタリ合った洋服を身に着けたような気持ちになる。ブカブカの服を着せられるわけでもなし、服の主張が強すぎて自分が服に着せられているという感覚を持つわけでもなし。自分に合った服装を身に纏っている。


ひんやりとした風が吹きすさび、自分の心が空っぽになる。パズルピースがぴったりと収まり、パズルが完成。少しも隙間は見当たらず、パズルの仕上がりは完璧である。

 

光と闇の点滅が瞼の奥底で作動し、気付けば朝になっていた。自分の周りには誰もいない。

 

 

 

当ブログの文章や画像を無断で転載することは厳禁です。もしそうした行為を働く者がいた場合、然るべき法的措置を取らせていただきます。