怠惰な生活を送る青年の日記

社会の片隅でひっそり生活しています。

東京滞在日記①

朝から新幹線に乗って東京に向かう。東京に行くのは約五年ぶりである。前に東京に来たときは、高校の同級生とヒッチハイクをした帰りに東京に寄っただけであり、観光らしいことはあまりしていない。浅草で食べ歩きをしたり、上野のアメ横で散策をしたりといった感じである。

今回も前回と同様にノープランで、東京をフラフラするつもりである。泊まる場所も訪れる場所も何一つ決めていない。現地に行ってその場のノリで決めるというやり方が自分は好きなのである。もちろん事前に何かを決めることもあるけれど、ほとんどノープランで何かをしてきたし、そうして旅をする方が断然自分は好きである。ということで、無計画の東京旅の始まり始まりである。

さすがは首都。たくさんの人ごみに紛れ込んでいるだけで、自分の存在が匿名性へと変容する。色をなくし、誰からも注目されない状況というのは、非常に心地よいものだ。東京駅へ着いてすぐに、東京メトロ一日乗り放題切符というものを購入する。今回は、これを使って東京のあちこちを散策することにする。


唯一決めていたのが、山谷のあたりに行くということだ。私は浮浪者がたくさんいる街の雰囲気が好きなので、東京滞在中は南千住のドヤ街にまず訪れたいと考えていた。なので、東京についてからは真っ先に南千住の方面に足を向けた。

千代田線と日比谷線を乗り継いで南千住駅に到着。南千住駅はそれほど異質な街であるという印象は受けない。ホームレスがたくさんいるという匂いも全然しない。僕が見聞きした情報と実態が異なっているのだろうか。駅周辺は澱んだ空気が感じられないけど、三ノ輪駅の方向に南下していくと、その匂いが少しずつ感じられるようになる。南へ下るにつれて、黒い足音がどんどん近づいてくる。辺りを見渡せば、ぼろ臭いホテルの連なりに囲まれていた。真昼間から卓を囲んで談笑する人間や、路上に座り込んで煙草を吹かす人などがたくさんいる。もうここはこういう街だと世間から認識されているので、誰も彼らに説教したりはしない。これは他のドヤ街と同じである。東京滞在中はここに泊まる気満々だったので、ホテルの受付の人に今日ここへ泊まりたいんですけど、と申し入れをするも、きっぱりと断られる。一日だけの宿泊はNGで、長期で宿泊する必要があるというのが、ホテル側の主張である。他のところも同じようで、やはり一泊だけというのは無理であった。せっかくここまで来たというのに、宿泊することができないとなれば、いったい何しにここへ来たということになる。身体の前後に大きなリュックを背負いながら、肩を竦めてとぼとぼと山谷を後にする。

さて、これからどうしようかと考える。俗にいう観光などには全く興味がないし、東京でやりたいことも特にない。しかし、とにかく歩き続けなければならない。そんなことを考えながら街を徘徊すると、雷門が近くにあった。浅草に限ったことではないが、観光地というのは一度訪れればそれでよく、何度も足を運んで鑑賞するべき場所ではない。この雷門もそういうスポットである。朝からほとんど何も食べていなかったので、何か食べ物を体に摂取したい。近くにはピンとくる食べ物屋さんがない。天丼屋が腐るほどあるけど、今はそういう気分ではない。では、チェーン店かというと、それも違う。何だかここを早く出たいと思って、渋谷に向かうことにした。

渋谷にはこれまで何度か来ている。中学二年の時に109で服を買ったことは、今でも強く記憶に残っている。当時は周りの同級生の影響を受けて、サーフ系やモノトーン系の服に関心を示していたものだ。このころよく読んでいた雑誌が、メンズエッグユースである。完全にチャラ男のファッション雑誌なのだが、これを二カ月に一度買って読んでいた。今にして思えば、自分はなんでこんな雑誌に関心をもっていたのだろうか。それがとても不思議である。自分の性格でいうと、こうした雑誌に出てくるファッションとは無縁の人間であるのに、、、。周りの人間から受ける影響力というのは本当に絶大なものだ。

どこで寝泊まりするか決めてないが、何となく六本木あたりに行きたいと思ったので、麻布十番に行く。少し近くを歩いただけで、お金のない人間がぶらぶらするようなところでないことは一目瞭然。ここは遊び場というよりかはグルメを楽しむ街である。高級そうな焼き肉店やレストランが軒を連ね、「貧乏」の言葉が入り込む余地がない。また、「娯楽」という言葉も馴染まない。みすぼらしい恰好をしながらバックパックを背負っている自分を客観視すると、自分はいったい何をしているのかという気になってくる。お店にお金を投資する気もないのに、こんなところをぶらつくとはこの街に相応しくない行動スタイルである。

街を歩いていると、いやでも視界に入ってくるので、ついついここに来てしまう。数分もしないうちに飽きる。


芝公園のベンチで一夜を明かそうとするも全く眠れず、結局ネットカフェで一夜を過ごすことに・・・。座りながら眠るのは難しいのう。


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