怠惰な生活を送る青年の日記

社会の片隅でひっそり生活しています。

ショーペンハウアー「自殺について」

自殺に関する書籍を色々と読み漁っていた時に、併せて読んだ本。哲学に少し関心を持ってはいるものの、本格的に哲学書を読んだことはまだない。後世にまで受け継がれている古典の多くを僕はまだ読んでいない。

筆者の思想は、厭世的、虚無的、悲観的で、人生に対してマイナスの考えばかりが目立つ。どうしてこれほどペシミスティックな考えを持っているのだろうか。生に対してとても否定的で、生を肯定する考えを持っていない。しかし、自殺を積極的に推奨するわけでもなく、自殺には否定的な立場でいる。

本書は一言でいうと、生と死をテーマに掲げた書籍です。それに付随して、自我や認識、意識、時間と空間の問題なども併せて論じられている。

僕自身、生死の問題や時間や自己、意識の問題などについて真剣に頭を悩ませたり、脳みそを費やしたりすることはこれまでまったくと言ってよいほどありませんでした。というのも、それらの問題にとりわけ関心を持たなくとも、日常生活を送ることができたからです。だから、そもそも関心が生じること自体なかったのです。

しかし、二十代の半ば頃からこれらの問題にわずかに関心を示すようになりました。そうなったのは、自分と外的世界との関係性に変化が生じたからです。これまでくっきりと映し出されていた世界が酷く曖昧なものに見えて、自分が本当にこの世界で息をしているのか、自分の感覚を頼りに行動しているのかがはっきりしなくなりました。いかなる行動も、自分の心身を使って何かをしているという感覚に乏しく、行動のひとつひとつがどれも嘘くさいと感じるようになったのです。そこから自我意識や身体感覚、時間間隔、外の世界との関係性などの問題が生じ、それ以後、自分にとってそれらの問いは大きなテーマとなったのです。しかし、こうした問題は何によって引き起こされているのかを僕はよく知りません。いくら様々な情報に手を付けて、自分について理解を深めようとしたところで、完全に自分のことを把握するのは不可能です。今の自分が形成されるまでには様々な人間が自分の人生に関与していて、誰のどんな振る舞いが自分の人格に影響を及ぼしているのかを知る術がないからです。ですから、自分のことは知らないことで満たされいます。自分の中には自分が到底知りえないような、また、知ることを許されないような出来事も無数に存在するでしょう。そうした分からないことが沢山あって、その謎を少しでも究明したいという思いがあるからこそ、自分はこうした本に手をつけている。

自殺については二つの見方があるように思う。一つは、生きることが面倒で、億劫と感じ、生の世界から逃れたいと思って死を選ぶというもの。二つは、生きることが苦痛でしかたなく、その苦痛から逃れるために現実逃避として、救いを求めた結果として、死を選ぶというもの。どちらも同じ自殺ではあるが、ニュアンスは全然異なる。前者は消極的な色合いが強く、なにがなんでも死にたいと言うわけではないが、生きるのが面倒なので死んでみたという生への執着心の無さが自殺の引き金になっているのに対し、後者は、自殺に対して積極的で、どうしても生の世界から逃れて死の世界へ行きたいと渇望することから生まれるもの。どちらも行き着く先は同じ自殺であるが、動機は似て非なるものである。どちらが悪いというのではなく、自分で選択したことであるならば、それは肯定すべきことであると思う。第三者のことを考えて躊躇したりすることもあったのでしょうけど、それでもなお自殺を選択したということは、死ぬ間際まで自分の気持ちに正直でいて自分の人生を全うしたということです。それを否定することはできない。

よく自殺をしたら地獄へ行くとか後世で苦しむという主張を見聞きすることがあるが、それはまだ確証のできないことでもある。実際に自分でそれを体験したわけでもないし、自殺した人から死後の世界がどのようなものであるか聞いたわけでもない。あくまで様々な言い伝えがある中で、そうした言い伝えが広くの間で、まことしやかに囁かれているだけのことです。ただ、自殺に関してはまだまだ分かっていないことも多く、自分に語れることは何もない。というのも、死んだ後のことや死後の世界がどうなっているかなど自分には分からないことだらけだからです。死んだあとに生まれ変わりはあるのか、精神や肉体は継承されるのか、言葉を用いて何かを語ることができるかなど分からないことがあまりに多すぎます。なので、そうしたなかでも結局は、様々な情報の中から自分が信用の置ける情報を信じるしかない。

本書を読んで改めて感じたのは、現代人が頭を悩ませているような問題は、遥か古来から存在し、過去の偉大な人間でさえ答えを出せていないものがほとんどであるということ。結局、謎は謎のまま解明されることなく人は死んでいく。それが人生というものなのだろう。

自殺に関連する書籍

 

 

 

 

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